2018年4月13日。田舎の私有地(畑)に私の所有の3棟の建物が全て焼失。「オーマイガッド!」
そのことは中国電力から入った1本の電話で知りました。
山小屋が焼けてしまったので電気を止めました。電気の再開を希望される時にはご連絡ください。なお、ご住所とお名前は消防署の方に伝えさせていただきました。
「小屋が焼けた?!?!?!」
「どういうこと・・・?」
「電気を引いている陶芸小屋で漏電が起きてて火事にでもなったんだろうか・・・?」
更に続いて、自分の小屋が火元になっているかも知れない不安を抱えてるときに、消防署からの電話。
消防署員にまず聞いた。「火元はどこ?」
他の場所で起きた火事が燃え移ったんです。類焼です。
自分自身が火事の原因ではないと分かりホッとしたのは事実。安堵したのもつかの間の事で、だったら誰が燃やしたんだ?と当然の疑問。
類焼、もらい火とは、他人が起こした失火が原因で、自分の所有する建物やその中の物が焼けることです。
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火事の被害にあっても損害賠償請求できるとは限らないってどういうこと?
もしあなたの家が他人の引き起こした火事で焼けて住めなくなった場合、当然加害者に賠償請求できると考えますよね。
ところが失火の場合の賠償請求は、他の賠償請求とは性格がかなり違います。
失火に関する責任は一般の民法ではなく、明治32年に制定された「失火責任法」が適用されます。この法律により、被害者にとっては弱り目に祟り目ともなる納得できない結果に終わる性格のものです。
加害者の過失で大事な我が家を燃やされた上、自宅の火災保険に入っていなかったり、入っていても保険が十分に適用されなかったら大損です。加害者は自らの火災保険で自宅を新築してるのに、焼かれた自分は住むところがないといった不条理なことになります。
火事の原因が「過失」ではなく「重過失」の場合のみ損害賠償を請求できます。火事を起こした原因が単なる「過失」だと「損賠賠償」を請求できず、加害者には燃えた跡の片付けする義務もありません。
それでは重過失が否定された例、認められた例を読んで重過失をイメージできるようにしましょう。
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- 工場の煙突から飛散した火の粉による火災
- 屋根工事をしていた職人が煙草を火の付いたまま投げ捨てて起こった火災。
- 浴槽の排水口の栓が不完全であったため、水がなくなったが、それを確認せずガスを点火し、空焚き状態から発生した火災。
- 仏壇の蝋燭が倒れて失火した場合に蝋燭の点火者及びその家族に重過失がなかったとされた。
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- 引用:河原崎法律事務所ホーム > 損害賠償請求 > 失火の損害賠償請求裁判 http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/law2sikka.html
- いずれも、少し注意してれば防げた火事です。でもこれは「過失」ではあっても「重過失」ではありません。こういった原因によってもらい火で自宅が焼けても、損害賠償の請求はできないんですから、火災保険に入っとかないとヤバいことになります。
- セルロイドの玩具の販売店員がセルロイド製品が存在する火気厳禁の場所で、吸いかけの煙草を草盆上に放置し、そこへセルロイド製品が落下し、火災になった例(名古屋高裁金沢支部昭和31年10月26日判決)
- 火鉢で炭火をおこすため、電話機消毒用のメチルアルコールを使用し、火鉢の火気を確認せず、アルコールを火鉢に注ぎ、火災になった例(東京地裁昭和30年2月5日判決) 。
- 電熱器(ニクロム線の露出しているもの) を布団に入れ、こたつとして使用し火災が発生した例(東京地裁昭和37年12月18日判決)。
- 強風、異常乾燥で火災警報発令中に建築中の建物の屋根に張ってある杉皮の上で煙草を吸い、そこに吸い殻を捨てたために火災が発生した例(名古屋地裁昭42・8・9判決) 。
引用:同上「火災警報発令中」に「杉皮の上で煙草の吸い殻を捨てた」。単なる過失ではなく、「火災警報発令中」で煙草を捨てるとどうなるかは、少し考えれば重大な結果を引き起こすことは容易に想像がつく。それで引き起こした火事には「重過失」が認められるという判例です。
重ねていいますが、損害賠償請求できるのは、原因が「重過失」の場合のみです。私の場合は「重過失」にあたるのか検証してみます。
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類焼被害の状況と原因
10数年前から車で20分の山の中の雑種地に「山小屋」「物置」「陶芸小屋」の3つを所有していました。
その中で最も大きな小屋(5.6m×5.6m=10坪)はまだ製作中。仕事を引退したら「山小屋」で好きな者が集まって陶芸教室をしたいと考えていました。
10年以上仕事が忙しいため時々行く程度でしたが、コツコツと2×4で製作し続けていた建物でした。
もらい火で燃えた山小屋
陶芸小屋
1坪のスレート葺の小屋です。この小屋は灯油窯を納入する業者関連で建ててもらいました。建築費55万円。灯油の陶芸窯は約77万円。
他には釉薬と山小屋製作のための電動工具各種。窯のバーナー、温度計全て焼けてただのゴミになってしまいました。
3つ目は4坪ほどの物置小屋
自宅では邪魔になるが、まだ使える諸々の物。中でも組み立てカヌーとドームテントは安くはなく、夏には活躍してくれてました。
火災被害申告書の提出
火災損害申告書を消防署に提出。消防署な火事被害の書類として保存するためのものです。この書類に損害額を一生懸命書き入れても、お金が返ってくるわけではありません。
が、後に損害賠償請求ができるとわかれば、参考資料にはなるでしょう。最大書き漏らさないように思い出しながら、被害リストとその購入価格で埋めました。
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類焼の状況
さて、一体誰が火事を起こしたのか?そのもらい火で焼けたのか?火事の状況は調査中とのことでした。情報開示を求めても消防署から拒否されたら、加害者さえわからないのか?
そんな不安を抱えていましたが、加害者はその後すぐに判明。
4月17日現場で被害状況を確認中のこと。
加害者本人が現れ、なぜ類焼が起きたのか簡単な説明をしました。謝罪とは言いましたが、コクンとうなずく程度で「すみませんでした。」と。その態度には呆れました。土下座しても良い状況です。
頭コクンて・・・・何だよ!(怒)
どのように火事を起こしたのか
4月13日の朝午前10時頃。私の土地の隣に住むS氏は、上記住所の隣の土地で草を刈り、火をつけそのまま仕事に出かけた。後に相談した弁護士によると「火をつけたままその場を離れることは重過失にあたる」と明言。
それが原因となり、午後2時頃火が燃え広がり建物3棟とその中にあった物品全てが焼失。S氏も自分が原因で火事を起こしたと認め「頭コクン」の謝罪?をしました。
当日の気象情報
当日の天気を広島地方気象台に問い合わせ。
広島地方気象台では津田 湯来の2箇所で気象観測。
12日~13日には乾燥注意報が出ていました。
最高気温20.7度 最低気温4.8度
風速 4.9m/s ~ 10.1m/s
乾燥注意報が出た上に、風もある程度強く吹く予測があったのに火をつけたまま仕事に出かける。単なる重過失よりも更に一段重い悪質な行為です。
「あなたの敷地にトタンが立ててあったので、火が多少燃え拡がってもそのトタンで止まると思った」と信じられない事を少し笑いながら言ってのけました。
燃え広がる可能性もわかっていたのですよ!これは放火に近い行為じゃないか?(ちなみにその会話は録音があるので、そんなこと言わなかったとは言わせません。)
不思議なのは、10時に火を着けて燃え広がったのがなぜ午後2時頃だったのかという点です。この理由も現地を見るとすぐに判明しました。
燃やしたのは草だけではなく、木も。この木が長く燃え続け類焼の原因になったのでしょう。自分の土地から出した火事ではなく、わざわざ他人の土地に入ってのこの行為は本当に悪質です。
損害賠償について話し合い
類焼で燃えてから8日目の4月21日午後4時に現地に呼び出しました。
実際の損害の状況を見てもらい、消防署に提出した「火災損害申告書」の罹災物品のリスト見せました。
こちらとしては当然の、損害賠償請求を行うと伝えました。すべての建物を復元するよう迫ったんです。金が欲しいわけではないのですから当然です。
すると、Sはこう言いました。
お金が無いので、これだけの損害を賠償を請求されるなら自己破産するしかない。お金を借りることができるかどうか確認するが、月々ホソボソと返済することになると思う。
私が、「復元できないなら後は話し合いの上で、双方納得できる金額を話し合いましょう。」と伝えると
とりあえず、火事の現場の整理を2~3ヶ月かけて自分でやりたい。お金が無いから業者は頼めないのでそれで誠意を示したいとのこと。
さてこの後、果たして加害者との話し合いは上手くいったのか、あるいは上手くいかずに損害賠償を諦めたのか、それとも裁判に訴えることになったのか。
このあとは法テラス制度で弁護士に相談しながらすすめることにしました。
長くなったので、この続きは別の記事に書くことにします。
まとめ
もらい火(類焼)で自宅等が燃えてしまったとき、火元に損害賠償請求できるのは原因が「重過失」と認められるときのみです。
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